第4位! 『あなたの人生の物語』(テッド・チャン) ネビュラ賞・ヒューゴ賞など権威あるSF賞を受賞しているテッド・チャン。しかもこれまで発表された作品がこの短篇8本のみなんですよ。数打ちゃ当たるって訳じゃない。1967年生まれという若さにも驚きました。
彼は世界を創造する能力が突出しています。それぞれの短編でまったく違う世界を描きながら、どれもが読者のセンスオブワンダーをかきたてる驚異に満ちています。SFというジャンルは読者を選ぶと言われていて、SF用語になじみのない人は敬遠しがちですが、ぜひチャレンジしてほしい本です。食わず嫌いはもったいない。
顔の美醜を判断する脳の働きを無効化するテクノロジー。美によってひきおこされる差別が全くない世界で暮らす人々のドキュメンタリー『顔の美醜について』。
頂上まで登るだけで1ヶ月半もかかるという巨大な塔。建設に関わる職人が頂上で見たもの『バビロンの棟』。
天使が実在し、降臨を見た者は死ぬという理不尽な世界。信仰を持たない者のジレンマ『地獄とは神の不在なり』他。
私が好きな作品はやはり『あなたの人生の物語』。突如地球に現れた全く言語体系の異なる異星人。意思の疎通を図るために選ばれた女性言語学者の奮闘と彼女自身の意識の変容を描いています。
言語学者の娘の思い出と日々の研究についてが交互に書かれていているのですが、なぜ二人称を使っているのかが最大のポイント。美しい作品です。私が大学で学んでいたことに関連していたので、全く知らない言葉を理解するプロセスをより興味深く読めました。【麻理】
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日本学生の読解力低下が問題ではなく文化差異が問題だ: 極東ブログ
その通り。これを読解力と言い切る教育関係者こそ、読解力ゼロですな。