少年探偵団→ホームズ→ルパンと、シリーズものを読破していった小学生の私が次に手を伸ばしたのが横溝正史。ご存じ、金田一耕助シリーズです。動機はホラー&エロ。角川の横溝正史文庫を見たことありますか? もうトラウマチックに表紙が怖いんですよ。

母親がこのシリーズを集めていたのですが、その本棚のあたりは禍々しいオーラが漂ってる感じでした。またタイトルが『悪魔が来たりて笛を吹く』『病院坂の首縊りの家』なんて口に出しただけで呪いがかかりそうな気味悪さ。
それでも怖いもの見たさで手に取ると、血なまぐさい殺人とともにどろどろしたジャパニーズ・エロが背後に忍び寄ってきます。
大地主の旦那様に手込めにされ……とか、不義密通の果てに……とか、小学3年生にはよく分からないまでもなんとなくエッチなことが書いてあるぞという直感が働くんですよね。こんな大人の本を読んでしまっていいんだろうかという罪悪感もあって、隠れてこっそり読みました。
でも金田一耕助自体は残念ながら小学生女児の私の心の琴線に触れず。彼は事件巻き込まれ型の探偵です。死体を見てはびっくりして腰を抜かしたり、次々と人が殺されるのに後手後手にまわっていて事件を食い止められない(だから「連続殺人事件」になるんですが)。ひょっとしてあんたが事件起こしてるんじゃないの?
いい年になった今は「金田一クンったら、カワイイ〜☆」と萌えられますが、当時はスマートで大人な天才・明智小五郎の方が好みでしたね。
大人になって時々横溝正史を読み返してみると、子どもの頃のゾクゾクした気持ちがよみがえります。私が生まれたときにはすでにカラーテレビも水洗トイレもコンピュータさえもありましたが、それでもまだ土蔵の暗闇や、明かり一つない夜中のあぜ道や、みんなが着物の喪服を着たお葬式を目にすることができました。
横溝正史の物語はDNAに刷り込まれた日本人の暗い部分を冷たい手でなでるのです。できれば横溝ものは現代っ子の子どもたちに読んで欲しい。暗闇の怖さを知っているのは大人よりも子どもだと思うから。そしてちょっと背伸びして大人の世界をのぞくときめきを感じて欲しいからです。【麻理】
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