超人的ビブリオマニア列伝(2)牧野富太郎(まきのとみたろう)博士

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「わたしは書物好きということならば人後に落ちぬ自負があったが、ある大先輩の蔵書展を見学して、すっかり自信を喪失した」(『荒俣宏の不思議歩記』)超人・ビブリオマニア・荒俣宏をしてそう言わしめたのが牧野富太郎博士です。

牧野富太郎(1862-1957)博士は孤高の天才として知られる植物学者です。高知県佐川村に生まれた牧野は、小学校に入学するも、あまりにも低い教育レベルに呆れ2年で自主退学。その後独学で植物学を学びました。彼の『牧野日本植物図鑑』は今も植物分類のための実用書として利用される名著。命名した植物は2500種に及びます。

牧野博士は日本植物学の父と言われるほどの偉人です。しかし東大の講師となった後も、小学校さえ出ていなかったため教授にはなれませんでした。

どれだけ功績があっても東大では学閥がものを言うのです。才能をねたんだ教授が大学の書籍や標本を貸し出さなかったという陰湿ないじめも。自分が教えた学生が教授になるのを牧野博士はどんな気持ちで見ていたのでしょうか。

牧野博士の書籍に対する情熱は半端ではありません。古本屋へ行くと値段も見ずに片っ端から本を積み上げ、山のような古書をごっそり買いました。借金は当時3万円もあったとか。今の金額にすると数億円ですね。

蔵書はなんと5万8000点。それでもなんとかなったのは酒造と雑貨を営む裕福な商家の生まれだったからです。

牧野博士は本に関するモットーを残しています。「書籍の博覧を要す(多くの本を読んで学べ)」「書を家とせずして、友とすべし(本を集めるだけでなく読まねばならぬ。本は対等の友として接するべし)」

その徹底ぶりは、本草学のバイブル『本草綱目』を23部も所蔵していたというエピソードで分かります。時代によって内容に差があると言っても、同じ本を23セットですよ! この稀覯本を23部所蔵とは奇跡としか言いようがありません。

あちこち調べていて、東大教授の石弘之氏のインタビューを見つけました。牧野博士は毎月1回、アマチュアの植物マニアを集めて観察会を開催していました。

子どもだった石氏が博士を困らせようと、雑草のハルジオンの花びらをピンセットで抜いて「こんな珍しいものを見つけた」と差し出しました。でも博士はかじったり匂いをかいだりして「ずいぶん上手く作ったね」と笑いました。

植物や本だけでなく子どもにも優しいまなざしを向けていた人だったんですね。博士は「私は、草木に愛を持つことによって、人間愛を養うことができる、と確信して疑わぬのである」と著書『植物知識』に書いています。

ビブリオマニアには変人が多いですが、こういう立派な人もいるんです。はい。【麻理】

画才にも恵まれた博士は非常に美しい植物画を描いています。
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今日のサイト

牧野富太郎蔵書の世界−牧野文庫貴重書解題−図録 – 牧野ミュージアムショップ Byca-auren

博士の蔵書が見られます。ありがたいサイトです。(※現在は見られません)

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