創作者が最も恐れることは偶然似てしまうこと 創作と盗作(2)

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創作と盗作
創作者が一番恐れていることは、自分の考えついた物語が偶然過去の誰か作品と似てしまうことではないでしょうか。ミステリ作家なら「過去にたまたま同じトリックが使われていた」みたいなことですね。

『島耕作』シリーズで有名な弘兼憲史。初期にSF短編をいくつか発表しているのですが、その中に『タイムトラブル』という作品があります(『私が愛した魔女』双葉社・アクションコミックス)。

主人公は売れないミステリ作家。素晴らしいアイデアが浮かび、これは世紀の大傑作だと出版社へ原稿を持っていくと「これはアガサ・クリスティの『ABC殺人事件』じゃないか」と突き返されます。

不思議に思いながらも今度こそと新作を書くのですがどれもこれも『オリエント急行の殺人』『アクロイド殺し』『ナイルに死す』『そして誰もいなくなった』の真似だと言われてしまいます。しかし決して盗作などではなく、確かに主人公は自分の力だけでそのトリックを思いついているのです。

SFならではのオチは割愛しますが、きっと弘兼憲史も主人公と同じ恐怖を感じていたのではと想像できます。

江戸川乱歩の『幻影城』を読んだことはありますか? これは古今東西のミステリのトリックを種類別にまとめたもので、現在も多くの作家・専門家が参考にしています。

評論家としての乱歩の深い洞察力、当時入手可能だった東西のミステリを網羅してある資料性の高さもありますが、ミステリのトリック自体がほぼこの『幻影城』で語り尽くされてしまっているという理由もあります。

ミステリのトリックは「いかに人を殺すか」。最新作もたいてい過去のミステリのバリエーションであるに過ぎないのです。だとしたら、自分が思いついたトリックでも偶然一致してしまうこともあるでしょう。他のジャンルの作家も同じだと思いますが、ミステリ作家は怖いだろうなあと思います。

私もやっぱり偶然似てしまうことは怖いです。私だけでなくなんらかの創作的な仕事をしている人で、この恐怖心を持たない人はいないはず。もちろん故意の盗作は絶対に許してはいけません。

でもその一方で昨日書いたように人類の歴史上全く存在しなかった、全くのオリジナルを人間が創り出せると思いこむのも傲慢な考えだと思うのです。

初出の物語を書くことははたして可能なのか? 創作と盗作(1)
いったい、過去において一度も存在しなかった、誰も見たことも聞いたこともないお話を考えつくことは可能なのでしょうか? これだけの書物が存在している以上、完全に初出の物語を書くことは無理なのではないかという気がしてきます。

物を作って発表するのは本当に勇気がいることです。他人から批判を受けるかもしれないし、偶然の一致の恐怖心とも闘わねばなりません。でも創作者は過去の作品に関する知識を持ち、常に学び続け、謙虚な気持ちで物を作り続けるしかありません。【麻理】


資格シマコーのイメージが強いが、私はSFの方が好き。「タイムトラブル」がどの巻に収録されてるか分からない。申し訳ない。

今日のサイト

「FLASHミニ講座 絵が苦手な人のFLASHアニメーション」(リンク切れ)

こうやって知識を披露してくれる人がいるのは本当にありがたい。ネットはそんな人たちの善意で成り立ってる。

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