昔のクラスメートから相談を受けることがあります。妊娠・出産した彼女たちは「子どもをバイリンガルにするにはどうしたらいいの?」「英才教育に興味があるんだけど」と聞きます。
あくまで私の意見ですが「英才教育は特殊な条件下になければ成功しない。そして失敗した場合、深刻な事態を引き起こすことがある」と考えています。(注:ここでは頭脳的英才教育について述べます。早期教育に関しては別の機会に)
自分の子どもに英才教育を望む親御さんにぜひ読んで頂きたいのが、花村萬月の『父の文章教室』です。
花村萬月は『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、『ゲルマニウムの夜』で第119回芥川賞を受賞した作家。暴力的・官能的な作品が多く、好き嫌いが分かれると思いますが、人間の本能や欲望を描写する筆力は一級です。本書は彼が幼い頃、父から受けた英才教育について書いたエッセイです。
花村氏の少年時代は一言で言えば「地獄」。6歳の少年に大人用の文庫本を読むよう強要し、常に暗算の計算問題を出し、できないとなると拳が飛んでくる。
4年間にわたる狂気の教育は父の死によって中断されましたが、この凄惨な体験は花村氏の人生に大きく影響しています。
「自分ができないのに子どもに勉強を強要する教育ママ(パパ)」を笑うことは、裏を返せば「自分は優秀だから自分の子どもも絶対にできるはずだ」という危険な思いこみを生むのです。そしてこちらの方がずっと根が深い。
花村氏の父は明治生まれには珍しく、大卒(明治大学)でラテン語、中国語、英語、ドイツ語を操るインテリでした。父親は自分の「十二分の一の模型」である花村氏を「組み立て、ラジオコントロールで操縦することが愉しくてなら」なかったのです。
子どもは親の所有物ではありません。ましてや自分の夢を子どもに叶えさせるような傲慢さを持ってはいけません。本書を読んで、それでも自分の教育方針がゆるがないのなら止めませんが、生半可な覚悟では英才教育は成功しないでしょう。
しかしながら親というものはいくら客観的であろうとしても、自分の子どもに関しては盲目的になるもの。明日も英才教育についてもうちょっと書いてみます。【麻理】

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今年もやってたんだね。この京大生の情熱が好きだ。ただ子どもを京大に入れるために情熱を注いできた教育ママは顔をしかめるかもしれない。