憂鬱な憂鬱な物語『ユージニア』(恩田陸)と中学時代の思い出

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ユージニア
ある地方都市で起こった医師一家毒殺事件。生存者は盲目の美少女のみ。死亡者17名という大惨事は、犯人であるとされる青年の自殺により幕を閉じたかのように見えた。しかし事件を追ったルポルタージュにより、年月を経て再び関係者を巻き込み始める……。

恩田陸の『ユージニア』は『Q&A』同様、事件に遭遇した人々のインタビューや資料・記事によって、事件を再構築するという手法の作品です。一応ミステリに分類されるのでしょうが、なんとも説明の難しい小説です。

読み終わってもずっと心にもやがかかったような気持ちです。薄気味が悪く、気がつくとじっとりと手が汗ばんでいるような物語。

『ユージニア』を読んで思い出しました。私は目の前で人が亡くなるという体験をしたことがあります。それは大学受験合格発表の日の帰り道でした。長い受験勉強も終わり、嬉しさと晴れがましさで私は有頂天になっていました。たまたま道で中学時代からの友達Yちゃんと出くわして、二人で手を取り合って喜びました。

突然大きな音がしました。私たちの前で女の子が倒れていました。人生で最も幸せな日はあっけなく終わり、私はしばらく何も食べられず寝込んでしまいました。

それから何年か経ってYちゃんとその時のことを話し合ったことがあります。私はYちゃんの話を聞きながら奇妙な違和感を覚えました。記憶にズレがあったからです。

ショッキングな出来事だったので忘れることはできませんし、二人とも大きな記憶間違いをしていた訳ではないのですが、Yちゃんと私とでは見たことや感じたことがかなり違っていたのです。

重体の人を前に看護師を目指していたYちゃんと、一般人の私が別の部分を見ていたのは当然とも言えます。でも二人並んでその光景を目にしていたのにこうも違うものなのかと唖然としました。

いったい真実というものはあるんだろうか? 私が持っている記憶や思い出は本当のことなんだろうか?「真実」とされているのはその場に居合わせた人々の公約数的な証言を抜き出して、寄り集めたものに過ぎないのではないだろうか……? 突然足下の地面にぽっかり黒い穴があいたような気持ちがしました。

『ユージニア』はそんな小説です。ちっともすっきりしない。胸のあたりにどんよりした不安がとどまったまま。もう一度読みましたが、「あの事件はなんだったんだろう」と思うばかりです。

この小説を「面白い、傑作」と思う人もあれば、「なんだこりゃ」と思う人もいるでしょう。ちょうどこの事件に対する様々な人々の想いががあるように。【麻理】

装丁が素晴らしく良い。誰かと思えば、やっぱり祖父江慎。フォントも、色も、紙の手触りもメランコリックなこの本に、ぴったりだ。トレビヤン。
こちらもインタビュー形式で語られる、凄惨な事件を描く。この本を読んでしばらくはショッピングモールに近寄らなかった。

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