超人的ビブリオマニア列伝(1)城 市郎(じょう いちろう)氏

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城 市郎
日本の発禁本コレクターの第一人者・城 市郎(じょう・いちろう)氏を知っていますか? 彼の名を知らないビブリオマニアはモグリと言ってもいいほどの、筋金入りの希少本収集家です。

ビブリオマニア(Bibliomania・愛書狂)とは何か?(1)
ビブリオマニアとは本を意味する「ビブロス」と「マニア」の造語です。ビブロスはアジアの西、フェニキア(現レバノン)の都市。フェニキア文字はアルファベットの起源となった世界最古の文字です。ギリシア人がエジプトのパピルスを輸入したときに、この地を経由したため本(または聖書)の語源になりました。

ここしばらくビブリオマニアについて解説してきたのですが、彼らの本当のスゴさを伝えきることができずに歯がゆい思いをしています。私なんぞはビブリオマニアのペーペー。オタク用語で言うと「ぬるい」マニアなのです。世の中にはもっと濃いマニアがたくさんいます。

城 市郎(じょう・いちろう)氏は1922年、仙台生まれ。関東大震災後に一家で上京し、極貧生活を送ります。戦後豊島運送に勤務しながら発禁本の収集と研究所を執筆。20年近くガンと闘いながら発禁本を集め続け、その蔵書は2万冊を超えています。もちろんマニアが涎をたらすほどの希少本ばかり。

発禁本とは出版差し止めをくらった本のことです。多くはポルノグラフィがその対象になったのですが、戦争中には思想的な本も発禁本になりました。谷崎潤一郎や志賀直哉、江戸川乱歩という文豪も軍部批判や社会秩序を乱すという理由で著作が発禁本になったことがあります。

発禁本収集には莫大な金額と時間をつぎ込まねばなりません。それを数万冊収集しているというのは超人と言っても過言ではありません。しかも城氏はガンからくる全身の痛みをクスリで散らしながら文字通り血を吐くような努力で本を集め続けているのです。

彼は「発禁本の何が一番面白いか?」と問われてこう言っています。

白いとか面白くないじゃなくて、完璧を期したいんですよ。初版が発禁になって改訂版出したら、それも一緒に集めるとか、雑誌に発表した時になんともなくて単行本になったら伏せ字になっていたとか、そういうのを全部完璧に収集する、それが一番念頭にあることです」

(BRUTUS 1995年3月15日号)

この常軌を逸した(もちろん褒め言葉)完璧主義にため息が出ます。

表紙に飛び出す絵本的仕掛けのある『四畳半襖の下張り』、性愛挑発で発禁になったラディゲの『肉体の悪魔』、死体写真満載の伊藤隆文 編『犯罪現場写真』、宮武外骨、梅原北明……お金に換算するのは下品ですが、彼のコレクションは数億円(下手すると数十億?)の価値があるでしょう。

彼は10年ほど前に東京から河内長野に引っ越しています。その時数百箱あった本の段ボール箱のうち、最も価値のある1箱が紛失しているんです。私は怒りで手が震えました。運送屋さん、わざとだったらただじゃおかん。ゴミになっているぐらいなら、まだコレクターが秘蔵していた方がまし。ああ、紛失した希少本は今いずこ?

城氏はインタビューで『(亡くなった時は)たぶん一緒に焼いてくれとか言うんじゃないかな』と、おっそろしいこともおっしゃってます。

じ、冗談ですよね? 噂ですが、彼の死後本を処分する古書店も決まっていて、バラバラに引き取られてしまうとのこと。誰かメンテナンスをしてくれる相続人はいないんでしょうか? 記念館、図書館にしたっていいくらいなのに。

彼のコレクションは文化的にも非常に貴重です。国が出資してもいいくらいですが、そもそもお上が発禁処分出してるわけですからねえ。困ったもんだ。

城氏は今ご健在なのでしょうか? ご高齢の上にガンを患っていらっしゃるので心配です。調べてみたのですが分かりませんでした。どなたかご存じの方がいらっしゃったらぜひお教え下さい。【麻理】

今日のサイト

RAFAŁ TARAS – MALARSTWO(リンク切れ)

子どもの頃に感じた恐ろしさってこんな感じ。想像力をかき立てる作品。

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