マンガ『不思議な少年』と『ミステリアン』について考えたこと

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はじめにこの記事は何らかの告発をしようとするものではないことを書いておきます。また記事内容の性質上、完全にネタバレになってしまうことをお断りします。よって山下和美の『不思議な少年』、西岸良平の『ミステリアン』を読んだことのない人はご注意下さい。

『不思議な少年』は年をとらず、古代から現代へと様々な時代を旅しながら人々と出会うという物語。何者かはっきりと明かされない美少年、それぞれの時代を懸命に生きる人々の人生、根底に流れるヒューマニズムなどとても魅力的なマンガです。

最新作2005年2月17日号の『モーニング』掲載の『由利香』では、少年はとある田舎町を訪れます。そこで出会った合田由利香(ごうだゆりか)は中学3年生。少年は同じ中学校に通って由利香を見つめます。彼女は毎日幸せを感じながら生活するものの、少年と日々を過ごすうちに自分が暮らす世界に疑問を持ち始めます。

実は本当の由利香はバスを乗っ取り、警官や乗客を次々と殺す30代の女。凄惨な人生を歩み、世の中を恨み、何人もの人間を殺してきた殺人鬼でした。バスの中で人質となっていた少年は、彼女が機動隊によって射殺される寸前に、平和で暖かいもう一つの人生の存在を教えたのです。

一方『ミステリアン』の中の短編『まぼろしの海』。発行は1985年。主人公はミステリアンと呼ばれる宇宙人。広美という名前で社会にとけ込み、地球人をレポートする任務を負っています。超能力を持ち、年をとることもなく、様々な人と関わり合いながら彼らの人生を観察し続けます。

喫茶店のウエイトレスとして働いていたときのこと。指名手配中の殺人犯が喫茶店に立てこもり、広美を人質にします。犯人の風間は田舎から出てきた後、やることなすこと上手く行かずとうとう何十人も人を殺めたプロの殺し屋になってしまいます。

犯人は広美と故郷の思い出を話すうちに海を見に行こうと言い出します。そして逃走用のクルマに乗り込もうとした瞬間、待機していた警官隊に射殺されます。

その刹那、広美は超能力によって彼にもう一つの人生を夢見させます。田舎ののんびりした生活、幼なじみとの結婚、幸せな家庭生活。警官達が見守る中、風間はおだやかな顔で死んでゆきます。

『不思議な少年・由利香』では見物人が発する「俺……いると思うんスよね。生まれつき心のない奴って。いわゆるモンスターっていう奴が……」というセリフと、善良で可愛らしい中学生・由利香のもう一つの人生を描いています。

そして『ミステリアン・まぼろしの海』では「結局地球人の中には悪人もいるが、産まれながらの悪人というものは存在しない……」という広美のセリフと、愛する妻と家族に囲まれた風間のもう一つの人生を描いています。

ストーリーも絵の構図も似ています。でも私にはこれが偶然の一致なのか剽窃・盗作のたぐいなのか、はたまた換骨奪胎なのか判断がつきません。私はどちらの作家のファンでもあるし、両氏の著作が好きです。それぞれの作品を読んだときに胸がしめつけられるような哀しみと暖かい感動を味わいました。両作品が名作であることは間違いありません。【麻理】

時を超えて生きる不思議な少年と人々との出会い。山下和美のライフワークとも言えるベストセラ。
他の西岸良平ものと同じく残念ながら絶版。古書店やマンガ喫茶で読もう。

今日のサイト

「中国4000年の歴史が生んだ魔のコラボレーション『ドラゴン星矢』」(リンク切れ)

何というかまあ、その……。

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